SKJGMARCH関関同立を、2021の志願者数と合格者数からわかることを中心に分析する。
2021は受験生にとっても大学にとっても激動の年となった。2022を目指す受験生はこの事実を踏まえて、適切な戦略を立てて挑むべきである。
まず、各大学、過去5年の、志願者数、合格者数、補欠者数、繰上数をまとめた。ここからわかることを伝えたい。
2021年は、関東関西の難関私大全体で、志願者が10.2%減った。一昨年から見れば、15.7%減ったことになる。これは、2020年度入試改革を迎えて、2020、2021と、浪人を手控える動きがあったからである。もう一つは、「文科省による定員適正化指示」の影響と、入試の難易度が落ち着いたため、受かりやすくなり、既卒生が減ったことによる。難関私大全体で、2019⇒2020で志願者が6.1%へり、2020⇒2021では、10.2%減った。つまり、全体としては、前年以上に易化や他大合格による辞退率の上昇は激しく起こっているだろう。
この志願者数減少とそれによる易化の動きは、2020から始まっていた。そもそも上記「定員適正化指示」による難化のピークは、早慶が2017~2018、関関同立GMARCHは2018~2019だった。表の合格者数が減り、志願者数が増えていることでそれはわかる。そうなると倍率が上がり、偏差値が上昇する。難易度がどう変わったかは大学学部ごとの別ページ(弊社分析提供)を見てほしいが、平均でも偏差値3以上の難化が起きた。偏差値3あがれば、合格率は半分程度になるので、とても大きな上昇であった。
その結果、既卒生が増え、翌年の倍率が上がる、そしてまた難易度が上がる、というスパイラルが2016~2019に起こっていた。
それが落ち着き、志願者数が減り始め、合格者数が増え始めたのが2019である。志願者が減るのは、既卒生が減っているからである。既卒生の減少は、共通テスト(センター試験)の年度別受験者数(既卒生)の増減を見ればわかる。
既卒受験者数 前年比
2016年 101,433人 97.8%
2017年 104,125人 102.7%
2018年 109,101人 104.8%
2019年 111,880人 102.5%
2020年 105,464人 94.3%
2021年 85,450人 81.0%
このように、先の説明と同様に、2019まで増え続け、その後急速に減少している。しかも、この数字は共通テスト受験者なので、当然国立志望の生徒を多く含む。そして国立に関しては、定員の変動などないため、既卒生の減少は軽かったと思われる。とすれば、この%の最大2倍程度、私大受験生には影響があったと言えないか。
先の難関私大の合計志願者数と並べてみるとよりはっきりする。
共テ既卒数 前年比 難関私大合計 前年比
2016年 101,433人 97.8%
2017年 104,125人 102.7% 919,719
2018年 109,101人 104.8% 969,174 105.4%
2019年 111,880人 102.5% 929,587 95.9%
2020年 105,464人 94.3% 872,842 93.9%
2021年 85,450人 81% 778,185 89.2%
ピークは一年ずれるが、早慶上智の難化のピークが2017~2018で、関関同立GMARCHの難化のピークは、2018~2019である。同様に、産近甲龍・成成明武・日東駒専のピークは2019であり、2020には易化が始まっていた。このように、上位大学から、順番に易化していった。共通テスト受験者の平均は、難関私大レベルより下であるから、ピークは一年ずれる。
以上のように、2021入試は、倍率という意味では、およそ全大学で易化しているだろう。そして、上位私大の易化は、中堅私大における「合格⇒辞退」をうむので、辞退率が高まり、補欠繰上りが多く出る。たとえば、慶応の文と経済は、2021入試において100%の繰上率であり、補欠者全員が合格した。このようなことは、過去、例を見ないことであり、この状況に大学側が対処しきれていないことを示す。同様に、3/18時点の計算で、上智大学の繰上数も前年の2倍以上になりそうであり、上位私大の易化と繰上増により、「繰上ドミノ」とでも言えるような現象が起きている可能性がある。こちらが認識しているのみでも、2020は、上智や学習院が3月末まで多くの繰上を出し、定員を調整し続けた。同様に、2021も辞退が連鎖する可能性は高い。
次に、大学ごとに見ていくと、まず目につくのは、2021年に、大きく受験システムを変えた大学の数字である。以下の大学が、個別日程に共通テスト併用型を導入し、大幅な変更をした。
前年比
早稲田大学 87.6%
上智大学 100.4%
青山学院大学 69.4%
立教大学 106.8%
早稲田は、個別入試を共通テスト併用型に変えた3学部、政治経済、国際教養、スポーツ科学、の3学部が、大きく志願者数を減らした。政治経済学部は、志願者数が前年比63%となったが、募集人数も450⇒300に減らしているので、それを勘案すれば前年比94%である。国際教養は、同じく募集人数の増減も計算に入れれば、前年比67%の志願者数であり、スポーツ科学は、37%と激減した。スポーツ科学は、さらに日程を変更して、早稲田最後の日程にしたので、辞退率も高く、さらなる易化が予想される。
同様に、共通テスト併用型をメインに据えた青山学院も、前年比70%以下と大きく志願者数を減らした。
その中で数字上は健闘している上智と青学だが、内情は異なる。上智は、2021年から、共通テストのスコアのみで合否を判定する「共通テスト利用方式」を導入していて、この志願者数が20.6%を占める。したがって、TEAP利用型と共通テスト併用型は、それぞれ、前年比95.1%、75.4%と志願者数を減らしている。募集人数も大きく変更しているので、それを計算に加えると、TEAP利用の志願者数は前年比61.5%で、併用型は95.4%になる。これは、TEAP利用が嫌われたというより、大幅な募集人員変更に、受験生がついてこれていないのだろう。併用型も、一気に募集人数を前年比71.9%にしてきたが、その問題に関係なく、受験生が75.4%しか集まらなかったのだろう。
つまり、上智大学は、併用型の受験生が減りTEAP利用に集まると予想したが、ふたを開けたらTEAPが前年同様で、個別日程(併用型)が25%減らした、ということなのだろう。TEAPと個別を合計すると、募集人数は前年比91%で、志願者数は79.7%である。青学と比べれば検討しているが、募集人数の増減を計算した前年比志願者数は、87.6%になり、早稲田と同様になる。
立教大学はそうではなく、入試システムの変更はうまくいった。立教大学は2021年に、個別日程の4日程を、それぞれどの学部学科でも受験できる方式に変えた。正確に言えば選択科目によって試験日程は絞られているが、かなり受験しやすいシステムになった。また、共通テスト併用が英語のみであり、しかもその英語のスコアは、外検スコアでも代替可能なので、かなり受験生が受けやすいシステムに変更した。したがって、もっと志願者数が激増するかと思えたが、全体としては、前年比7%増にとどまった。
全体としては、と言ったのは、学部ごとに見ると、明らかな傾向が見えるからだ。考えてみればそうなって当然だが、外国語、国際に近い学部学科は志願者が集まり、逆に遠い学部学科は集まらなかった。
志願者数前年比
異文化コミュ 172%
文学部 143%
理学部 94%
経済学部 90%
異文化と文が、前年比増加率1位と2位で、逆に理と経済が減少率1位と2位である。外部検定を利用するから、外検を受けそうな生徒が多い学部が併願需要を取り込み、逆もそうなったのだろう。次年度もこの傾向は変わらないように思う。
大学ごとに見る。
早稲田は、上記のように共通テスト併用型にした3学部が大きく減らしたが、他も前年比93%程度の志願者数になった。
慶応大学は、前年比95.4%で他大学と比べれば減っていない方だが、なぜか今年は辞退率が大きく上がり、前例がないほど補欠繰上合格が出ている。
明治大学は、前年比96.5%と、あまり減っていない。これは上智や青学の減った分を取り込んだとも捉えられよう。
中央大学は、前年比87.3%と、共通テスト併用を導入した早稲田や上智なみに減らした。これは、そもそも併願需要の高い大学のため、その需要が低下していることによる。
法政大学も同様に、前年比87.8%と中央並みに減らした。同じ原因だろう。
その中で学習院大学は、前年比101%と増やしたが、これも上智と同様に、「共通テスト利用型入試」を導入したからであり、これを除いた「コア+プラス入試」の前年比は、90%である。
関西の同志社大学は、前年比89%と平均に近い志願者数である。
関西学院大学は、前年比98.9%と検討している。
関西大学は、立教と似た大きな入試システムの改革をおこなったが、前年比90.7%とあまり成功していない。しかし、この大学の現時点で出しているデータがわかりづらく、最終的なデータを見てみないと分からない点もある。
立命館大学は、前年比80.6%と大きく減らしたが、昨年度が一昨年比110%と増やしていた反動だろう。
以上である。この推移をみて、2022年度入試がどうなるかは、各大学の次年度システムの変更が確定してから予測したい。というのは、共通テスト併用型システムは、ある意味うまくいかなかったので、それをそのまま続行せず、部分的でも変更してくる可能性があると考えるからだ。